れおの 写メ日記一覧
9月
愛惜
ずっと続いてほしいものほどいつか終わる こと季節も 時間も 関係も同じかたちのまま永遠に留めておくことはできないそれを考えると寂しいけれどそこにあったものが嘘には ならないからいつか離れてしまうかもしれないから と最初から大切にしないのではなくていつか手放す日が来るかもしれないと知りながらそれでも今 腕のなかにあるものを抱きしめていたい変わってしまうことも失ってしまうこともどうにもできない時間の流れさえも受け入れてそれでも出会えてよかった と 思えるところまでひとつのものを大切にできたならだから幸福の奥にはいつもほんの少しだけ 哀しみが澄んでいます美しい景色を見ている最中にもう懐かしくなるような大切な人の体温に触れながらこの瞬間を忘れたくないと思うようないつの日か 思い出になったとしても胸のなかに残った温度まで消えてしまうわけではない から澄んだ哀しみをひと匙だけ胸に秘めて
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抱いて
大切そうに 抱いてほしいそれなのに腕の力が少しずつ強くなって逃がすつもりなんてないみたいに抱え込まれるのも好き身体を預けるたび頭のなかにあった余計なことがひとつずつ 消えてく近すぎる体温にくらくらして息をすることさえ少し下手になってただ気持ちいい もっと という単純なことしか 考えられなくなる力を抜いた身体を抱えられてあなたに委ねるしかなくなる感覚が好き気持ちよさに身体が追いつかなくてぼんやりしてもう何を考えていたのかもわからなくてそれでも離されたくなくて無意識にこちらから近づいてしまう丁寧に扱われる幸福も少し我儘なくらい求められる悦びも欲を滲ませてもらえることももう少しあと少しだけ抱いて綺麗な意味だけじゃなくていいから大切に欲深く離したくないと思うままに力の抜けた身体をあなたに預けて気持ちよさで言葉まで頼りなくなってそれでも足りないと無意識にあなたへ近づいてしまう私をどうか そのまま抱えていてただあなたへ身体を寄せることでしか続きをねだれなくなった私を見てもう一度だけ腕に力を込めて
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補給
おはようございます元気でいることは義務ではない から朝になったからといって心まで目を覚ましてくれるとは限らないし昨日まで平気だったことが今日は妙に億劫だったりそんな日までわざわざ快活な自分を演じなくてもいいのでしょう元気じゃなくても いいですよけれど今日は元気がないです と 言ったときそれなら と自分の持っているものを少し差し出せたらいいなわたしの日記を読んだ数分だけ考えごとが途切れた とかくだらないことを言っているわたしを見てちょっと笑った とか会った日のことを思い出して口元が緩んだ とかその程度で いいのそしてわたしも知らないところであなたから随分たくさん 貰っています玄関を出るあなたももう電車に揺られているあなたもこれからお仕事を始めるあなたもわたしから 朝のぶんを ひとついってらっしゃい
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痕
人は 自分の知らない言葉では文章を紡げないように優しさにもまたその人がこれまで生きてきた時間が滲んでいるのだと思います優しさとは生まれ持った性格だけではなく生きてきた時間のなかで覚えていくひとつの知性なのかもしれません痛みを想像すること目に見えているものだけでその人のすべてを決めつけないこと近づくことだけではなくときには踏み込まないこと優しさにはきっとそんな静かな判断力も含まれているのでしょうもちろん傷ついた経験そのものが人を優しくするわけではありません痛みはときに人を頑なにするし自分を守るための棘にもなるだから傷ついたことのある人が優しいのではなく自分の痛みを誰かを傷つける理由にしなかった人が優しいのだと思っています本当の優しさには自分と他人の境界を守りながらそれでも相手を慈しもうとする静かな強さがあるように思います優しくしてもらえたことを当たり前にはしたくない今日あなたから受け取ったものもいつか 別の誰かへ返せたらいいそうやって名前も残らないまま人から人へ続いてゆくものがあるのなら世界も案外捨てたものではないのでしょう ね今夜あなたの心にも誰かにもらった小さな温度がひとつくらい 残っていますようにそして明日それを抱えたまま少しだけ穏やかに目を覚ませますように今日も一日 お疲れさまおやすみなさい
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欲情
自分というものがひどく曖昧になる 瞬間思考が鈍り 取り繕う余裕を奪われ身体ばかり 正直に されてしまう深くなるほど 言葉が減って代わりに感覚だけが 鮮明になってもう充分 と 嗜める頭とは裏腹に身体はもっと と 欲しがってしまうああ 私ってこんな顔をするんだこんなふうに息を乱してこんなにも無防備になれるんだ自分のことなのに知らない女を覗き見ているようでそれがまたたまらなく 厭らしかった源氏名でもない本名でもない最後に残るのはただ 気持ちいい に 忠実な女少し怖くてそれ以上に 甘美人はきっと自分を保っている間には出逢えない自分を誰しも何処かに飼っていて快楽はときどきその鍵を勝手に開けてしまうのだと 思いましたそして何より危ういのはそうして露わになった自分を知られてしまうことが嫌ではないことむしろ見つけてほしいとさえ思ってしまう余裕をなくしてどうしようもなく素直になったところまでいちばん無防備な姿を晒しても目を逸らされないことそれが 幸せで 堪らないの私のなかにまだ 私の知らない女がいるのならもう少し深いところまで逢いに行ってみたいたとえそこで待っているのが一度知ってしまえば以前の私には戻れなくなるような女だったとしてもそのほうがきっと愉しいでしょう
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