そんなもの
子どもの頃は 一日が途方もなく長かったお布団の中で 時計を見ても 見ても まだ今日のまま日付が変わるというだけのことをずいぶん遠い出来事みたいに待っていた夜が ありましたあの頃は 大人になれば時間はもっと自由になると思っていたのに実際に大人になってみれば一日は呆気ないほど短くて一週間も一ヶ月も指の隙間から零れるみたいに 消えていく不思議なことにその短くなった時間の中からときどき何年も昔のたった数分間だけが鮮明に蘇ります新幹線が来るまでの待合室硬い椅子に座ってまだかな と何度も時計を確認していたこと誰かを好きだった頃その人が吸っていた銘柄を覚えてしまって頼まれてもいないタバコを 買ったこと自分では吸わないそれを手にした瞬間ほんの少しだけその人に近づけた気がしてしまったこと今になれば どれも人生を左右するような出来事ではないけど私という人間を解体していけば最後に残るのはそういう名もない瞬間ばかりなのだと思いますそんな取るに足らない断片が知らないうちに身体の奥へ入り込んで抜けなくなって 今の私をつくっていてだから記憶というものは少し官能的で かなり ずるい身体は勝手に覚えているから似た香りがすれば胸の奥がざわついて懐かしい声色に触れればとうに終わったはずの感情が 目を覚ますもう欲しがってはいけないものほど記憶の中では 美しくなる触れられないものほど 触れたくなる帰れない場所ほど 帰りたくなるそうやって過去に少しずつ侵食されながら大人になるのでしょうか愛したものが増えて忘れられないものが増えて胸を締めつける記憶も 増えていく私はたぶんそういう瞬間に生かされて同じくらい 殺されています幸せだった記憶に救われながらもう二度と同じ瞬間には戻れない という事実に何度も静かに 首を絞められるそれでも忘れて楽になりたいとは思いません苦しくなるくらいなら最初から知らなければよかったなんて思えないだって 失いたくないと思えるほど何かを愛した証拠でしょうそして これから先も今はまだ何の意味も持たない一瞬がいつか私をどうしようもなく苦しめるほど大切な記憶になるかもしれませんあなたと過ごす何気ない時間だって そう永遠なんてないそれくらい大人になった私は知っています人も 場所も 関係も 感情も いつか形を変える どれだけ強く抱きしめてもその瞬間をそのまま閉じ込めておくことなんてできないそれなのに私は永遠を 永遠に望んでいる矛盾してる ねでも欲しいのは終わらない時間ではないのかもしれません終わったあとにも終われないものが欲しい何年経ってもふとした夜に思い出してしまうもの似た匂いだけで胸が疼いて名前を見ただけで体温が少し上がってもう触れていないのに身体のどこかが覚えているようなもの忘れようとするほど鮮明になって新しい日々を生きているはずなのにときどき私の中へ戻ってきてしまうものそんなふうに残れたらそれはもう 永遠 と呼んでもいい気がしますだからあなたにも私との時間を綺麗に忘れてほしくない優しい思い出だけじゃなくて少し苦しくて少し恥ずかしくて思い出したら無性に会いたくなってしまうくらいがいい人生のどこかで突然蘇ってあの女まだ自分の中にいるんだ と気づいてしまうくらいあなたの人生のほんの一瞬でいいから消えないところまで私を残しておきたいそして私にもあなたを残してほしい永遠なんてない と 知っている大人同士でそれでも懲りずに永遠になってしまいそうな一瞬を何度でも重ねていようね
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| 08/11(火) | 08/12(水) | 08/13(木) | 08/14(金) | 08/15(土) |
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| 13:00〜23:00 | 13:00〜23:00 | 13:00〜23:00 | 要確認 | 13:00〜23:00 |







