もうにどと
私の大好きな作家先生の新作もう 読めなくなっちゃったそのことがまだうまく現実として飲み込めませんまだ何も知らない物語の表紙を眺めながら今度はどんな人の人生を見せてもらえるんだろう なんて 想像するの読み始めれば日常の時間がいったん途切れて自分ではない誰かの痛みや秘密の中へ入っていくそして最後の一頁を閉じたあと物語の中から戻ってきたはずなのに読む前とは少しだけ違う自分になっている私にとって本を読むということはそういう時間でした寂しい とっても 寂しい作品の中に私がずっと大切にしている言葉があります「ここで辞めたら これからの人生いやなことがあるたびに逃げちゃうような気がして 続けてきたの」この言葉が 大好き一見するとただ我慢することや何があっても続けることを勧める言葉にも見えるかもしれませんでも私は この言葉をそんなふうには受け取っていませんでした逃げることが悪いわけではなくて本当に苦しい場所から離れること自分を壊してしまう前に手放すこともう頑張れないと認めることそれらもすべて自分を守るために必要な立派な選択ただ そのうえで誰かに 逃げるな と言われた言葉ではなく自分自身がここで辞めた自分をあとから許せるだろうかと考えた末もう少しだけ続けることを選んだ人の言葉なのだと思います逃げてもいいでも本当はまだ諦めたくない自分がいるならその小さな声を無視しないでいたい私はこの言葉をそういう意味で 何度も 思い出してきました思うようにいかない日自分の選んだ道が急に間違っているように感じた日周りの人が簡単にできていることを自分だけがうまくできないように思えた日全部やめてしまえばもう悩まなくて済むのかもしれないと考えた夜そんなときこの一文が 浮かんできましたもう少しだけやってみよう今日の結論をこれから先の人生すべての結論にしなくてもいい今すぐ正解を出さなくてもいいからせめて自分が納得できるところまでは歩いてみよう何度も この言葉にそう言われているような気がしましたもう新しい文章が生まれることはなくても残された言葉はこれからも新しい読者に出会い続けるそして 昔読んだ私がもう一度読み返せば同じ文章でもきっと 以前とはまったく違う意味を持って届くのだと思います十代で読んだ物語と大人になってから読む同じ物語では心に引っかかる場所も許せない人物も守りたくなる登場人物も違ってくる昔は理解できなかった弱さが今なら痛いほど分かるかもしれない本は変わらないのに読む私たちの人生が変わることで物語もまた 何度でも新しい表情を見せてくれる救われた言葉を確かめたくなったとき昔の自分に会いたくなったとき何かを続けるべきか手放すべきか分からなくなったとき本棚から一冊を選び知っているはずの頁をまた最初からめくるのでしょう改めて また見返そうかなあ昔と同じところで泣くのかなそれとも今まで何とも思わなかった一文に今度は救われるのかなそんなのは少しだけ 楽しみでもあるのかもしれませんよかったらあなたの心に残っている一冊も教えてください残してくれた物語はこれからも誰かの夜に頁を開かれ誰かの人生にそっと入り込み簡単には消えない言葉になっていくのでしょう私の中にもずっと 残り続けます何度も立ち止まった私をそのたびにもう一歩だけ歩かせてくれたあの大切な一文と 一緒に
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